ストレスは、EDの原因のひとつです。
とくに若年性EDは、ストレスの影響が大きいと言われています。
けれど、ストレスそのものが悪いというわけではなく、むしろ、適度なストレスは人体にとって必要なものです。
では、なぜ、ストレスが体に悪いと言われるのでしょうか。
ストレスが体に与える影響と、その対処法について考えてみましょう。
性格や考え方の問題?
ストレスが原因で体調を崩した人に対して、「ストレスに弱い」と言われることがあります。
同じように忙しい仕事をしていても、体調を崩す人もいれば、まったく平気な人もいます。
平気な人は、そうでない人に対して「これぐらいのことで体調を崩すなんて。ストレスに弱いなlと言ったりしますよね。
時には「甘えてる」と、批判的な意見を口にすることもあります。
ストレスへの反応は、人によって違います。
ストレスに強い人と弱い人がいるのは、事実です。
そして、ストレス耐性(ストレスに強い・弱い)の違いは、性格や考え方の問題だとよく言われます。
だから、気持ちを切り替えるとよいとか、ポジティブ思考になろう、と提言されることが多いのですが、
私はやや違う気がしています。
性格や考え方などの影響が、全くないとは思いませんが、
「気持ちの問題」と言うよりは、「体の問題」の方が大きく関わっているように思います。
「体の不調」がまず先にあって、その影響で「気持ちの問題」が生じてくる……そう思うのです。
つまり、気の持ち方だけでコントロールできるものではないと思うのです。
強いストレスが体や心の健康に影響するのは、ホメオスタシス(生体恒常性)の機能がバランスを失ってしまうからです。
「ホメオスタシス」は、体を環境に適応させたり、安定させるためのシステムで、体が本来持っているものです。
ホメオスタシスは、
1・自律神経
2・内分泌
3・免疫
この3つで構成されています。
なんらかのストレスがかかった時、これらが作用し、体を安定させるために活動します。
これらがバランスよく働いていると、体の機能は安定し、心身の不調はおこりにくくなります。
ストレス時に、体の中でおこっていること
人が生きていく上で、ストレスは欠かせないものです。
ストレスそのものは、良いとか悪いとかではなく、「あって当たり前」のものです。
まったくストレスのない状態というのは、却って体の機能を衰えさせることにもなります。
ストレッサー(ストレス要因)は、緊張や不快感、ショックな出来事など以外にも、
急な気候変化などの自然現象、喜びなども含まれます。
体になんらかの刺激を与えるものすべてが、ストレッサーなのです。
与えられた刺激に対して、体の状態が変わらないよう維持するのがホメオスタシスで、
ストレッサーにさらされた時、主に反応するのは「自律神経」と「内分泌」です。
まず、大脳でキャッチ
ストレッサーは、まず、大脳でキャッチされます。
大脳は、体の情報すべてを受け取り、指令を出す、人体のコントロールセンターです。
大脳が得た情報を元に、体に必要な物質を分泌させる指令を出します。(神経伝達物質の放出)
神経伝達物質は視床下部に届き、CRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)が分泌されます。
その後、2つのルートに分かれます。
自律神経のルート
自律神経は、交感神経と副交感神経からなります。
CRHは交感神経にはたらきかけ、ノルアドレナリンが分泌されます。
その刺激で、副腎皮質から、アドレナリンとノルアドレナリンが分泌されます。
アドレナリンは、血管の収縮、心拍数の増加、血圧の上昇などを促します。
血管の収縮や心拍数の増加などは、ダッシュで走れる準備を行うようなもので、「危機回避」としての生体反応です。
ストレスから身を守るために、危機回避の反応が起こるわけです。
内分泌系のルート
CRHの刺激により、脳下垂体からACTH(副腎皮質刺激ホルモン)と、β-エンドルフィンが分泌されます。
ACTHは、副腎皮質からコルチゾールを分泌させます。
コルチゾールは、代謝や免疫を活性化させるのに作用するホルモンです。
β-エンドルフィンは、脳内麻薬と言われる、緊張や痛みを緩和する作用のあるホルモンです。
また、ストレス時には、下垂体ホルモンの分泌が抑制されます。
抑制されるホルモンのひとつに、「性腺刺激ホルモン」があります。
性腺刺激ホルモンの分泌が抑制されると、テストステロン(男性ホルモン)の分泌も抑制され、EDの原因となります。
免疫系や脳への影響
ストレッサーにさらされ続けると、自律神経系では、常に交感神経のスイッチが入った状態になります。
血管が収縮していると、血流が悪くなります。当然、毛細血管への血流も悪くなるので、体の末端が冷えたり、老廃物の排出が滞るなどの影響が考えられます。
消化器系のはたらきが抑制されるので、消化・吸収の機能がうまく働きません。
そのため、体に必要な栄養素が取り込めなかったり、胃腸の活動が低下して、胃痛や便秘・下痢などの症状も出やすくなります。
また、自律神経繊維が、免疫系に直接、接して影響を与えているとの説もあります。
皮膚にあるランゲルハンス細胞は、皮膚から免疫系に働きかける細胞ですが、この細胞に自律神経繊維が接しています。
皮膚炎の発症や悪化にも、ストレスは大きく関わっているのです。
内分泌系では、副腎皮質ホルモンであるコルチゾールは、免疫抑制に作用します。
そのため、感染症や癌に対する生体防御機能が、低下してしまいます。
またCRHは、脳の覚醒レベルを上げるとされていて、情動過敏な状態になります。
セロトニンというホルモンも、脳に影響を与えるとされていて、攻撃性が高くなったり、自殺願望などの、精神的な不調をきたします。
互いに影響しあっている
自律神経・内分泌・免疫。
これらは相互に影響しあっています。
Aという物質(ホルモンなど)を出す指令が出たとします。放出されたAは、Bという物質を放出させたり、器官(内臓など)にはたらきかけます。その作用でDやC、E……と別の物質が作られたり、別の器官がはたらいたりします。
放出された物質や器官のはたらきは、随時、モニタリングされ、フィードバックが行われています。フィードバックによって、物質の放出を止める司令になったり、別の指令が出たりします。
これらの、相互に影響しあっている仕組みは、まだまだ解明されていない部分も多く、脳への影響についても、いろいろな説があります。
ですから、「このホルモンを投与すればいい」などの安易な対処法では、無理があると思うのです。
絶妙なバランスの上で成り立っているのが、私たちの体です。
それは自然と同じで、外的な力で調整しようとしても、どこかに無理が出てきます。
土が落ちてくるからと、斜面をコンクリートで固めてしまうと、雨水や地下水、植物の根、土の中の生物など、あらゆるものに影響し、いずれなんらかの形でトラブルが表面化します。
表面化した時に、生態系を含め、もとの斜面に修復するのは、とても困難です。
気持ちの問題だけではない
ストレスに弱い人に対して、「気合いが足りない」とか「打たれ弱い」など、批判的に言う人がいます。
ストレスのとらえ方に個人差があるのは事実です。
持って生まれた性質や、育った環境、受けた教育、経験、そして体質の差。
まったく同じ人間はいないのですから、ストレスをどう感じとらえるかも、人によって違うのは当たり前です。
ストレスを強く感じている時点で、体はなんらかの不調を示しています。
ひどく緊張する場面で胃が痛くなったり、頭痛がするなどの経験は誰にでもあるでしょう。
これは、恒常性を維持しようと、体がいろいろな仕事をしているためにおこるものです。
自律神経の影響で消化器系の具合が悪くなったり、血圧や血糖値が変動し、頭痛がおきたりするのです。
緊張する場面が一時的なものなら、緊張から解放されれば不調は自然と治まっていきます。
けれど、緊張状態が長く続くと、体はバランスを保てなくなり、なかなか本来の状態に戻れなくなります。
不眠や消化器症状(下痢など)、副腎疲労などをおこしてしまうと、免疫も低下し、不調が不調を呼ぶ状態になってしまいます。
そんな状態になっては、「気の持ちようだ」「考え方を変えろ」と言われたところで、できるわけがありません。
気持ちを切り替えるだけの余裕が体にないのですから。
また気持ちは、内分泌系の影響を受けています。思考がまとまらない、集中力が続かないなどは、決して自分の能力が劣っているからではありません。それらに関係する内分泌系のはたらきが弱っているせいでもあるのです。
マイナス思考に陥ってしまうのも、ある意味、しかたのないことだと言えるのです。
では、どうすればいいのか
ストレス対処法は、3種類あるとされています。
1・ストレッサーを遠ざける
2・思考を切り替える
3・ストレス反応の緩和
1は、環境を変えることです。仕事を辞める、引っ越すなど、ストレッサーをなくす対処です。
2は、カウンセリングなど受けることも含まれます。
3は、休息や運動などで、体の不調をただし、ストレス耐性を高める対処です。
環境を変えるのは、なかなかできない場合もあると思います。
思考の切り替えは、上述のとおり、スムーズにいかない場合もあります。
ですから、体の不調をただすことから始めてみるのが、良いのではないでしょうか。
有酸素運動や、入浴、太陽光を適度に浴びるなど、ごく簡単なものでも、定期的に継続することで体は調ってきます。
体が調ってくると、気持ちの切り替えもできるようになってきます。
ストレス反応の緩和に 鍼灸は向いている
鍼灸は、自律神経への作用が大きいものです。
「体の緊張がほぐれ、血流が良くなった」
「ぐっすりと眠れた」
この2つは、鍼灸を受けられた方のほとんどが実感されています。
冷えやむくみの解消、胃腸へのはたらきかけ、痛みの緩和といった作用もあります。
ぐっすり眠れて、消化吸収が良くなり、体が温まる。
これだけでも体調はずいぶん違ってきます。
また、1回の施術が40分~60分ほど。
施術中に眠られる方もいますし、雑談することも多くあります。
眠りも雑談も、ストレス反応の緩和には大切な要素です。(雑談は、上記のストレス対処法2の、カウンセリングの役割をすることもあります)
鍼灸は、EDに対する即効性は、残念ながらありません。
けれど、体が本来持っている力を取り戻し、バランスのとれた体を維持できるようになることは、将来においても有意義なものです。
寝たきりになるのを防いだり、認知機能の低下を遅らせることも、できるかもしれないのです。

